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お家に帰りたい
ボクは無性にママに会いたくなった。
今もボクの事を探し回っていたらどうしよう?
どこかでケガをしていたら、どうしよう?
個室から出て、神父様がいる部屋へ行こうと思ったら長椅子の陰から、ひょっこり神父様が顔を出した。
ボクは駆け寄って、ニコニコと微笑む彼の顔を見上げた。
「ご苦労様でした、天使さん」
「あっ……」
そう言われて、ボクは恥ずかしいやら、申し訳ないやら俯いてしまった。
そんなボクの頭を神父様は優しく撫でてくれた。
「物音がして来てみたら、少しだけ聞こえてしまって……。彼らの悩みを聞いてくれてありがとうございました。想いを口にする、共感してもらう。それだけでも彼らの救いになります」
「あの……天使を名乗ってごめんなさい」
ボクが座ってペコリと頭を下げると、神父様は優しい声で話した。
「いいえ。神はあなたを許すでしょう。あなたに、神のご加護があらんことを……」
神父様がロザリオを持って、そうお祈りしてくれたので、ボクはほっとして立ち上がった。
「神父様、ボク……お家へ帰ります。ママとケンカして出てきちゃったんだけど、心配だし……今はママに会いたいんだ」
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