お家に帰りたい

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「そうですか、分かりました。では、これを持って行って下さい」 そう言うと神父様は一度離れ、戻って来るなり生成り色の布に包んだパンを2つも渡してくれた。 ボクはまた舌が出そうになったのを堪えて、神父様を見た。 「天使さんへのお礼です。お母様と食べて下さいね」 神父様はパンを包んだ布をボクの体から落ちないように結んでくれた。焼き立てではないけれど、ほのかに漂う甘い香りにお腹が鳴りそうになった。 「ありがとうございます、神父様。親切にしてくれて感謝しています」 ボクは何度もお辞儀をして、教会の出口へと歩くと、笑顔で見送る神父様をくるりと振り返り、立ち止まった。 「……また、遊びに来てもいいですか?」 「もちろんですよ。いつでも、来て下さい」 その返事を聞いて、ボクは嬉しさのあまり少しはしゃぎながら教会を出た。
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