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「あ、あの……今夜寝る場所を探しているの」
ボクが発した小さな声は教会の中で僅かに反響した。
目の前の男はまたにっこり微笑むと、立ち上がって手招きをした。ボクは導かれるまま、その後ろをついて行った。
「どうぞ、この部屋を使って下さい。私は向かいの部屋にいますから、何かあれば言って下さいね。あ、扉は開けたままにしておきましょう」
驚いた……なんて広い部屋なんだ!
人間はこんな四角くて天井の高い部屋で寝るんだな…。ボクがキョロキョロと部屋を見渡していると、男は隣に来て屈んだ。
「申し遅れました、私はこの教会の神父です。お腹は空いていますか? 何か食べられそうな物をお持ちしますね」
ボクは思わず口周りを舌でペロペロしてしまった。
恥ずかしく思いながらも、部屋で大人しく待つことにした。
ベッドの上から輝く丸い月を見ていたら、だんだんママの顔に見えてきた。
胸がキュッとなって寂しさが込み上げてきたけど、頭を振ってかき消した。
間もなく、ドアの向こうから美味しそうな匂いが漂ってきて、神父様が部屋に戻ってきた。
低めのテーブルを置いてくれて、そこに温かい野菜スープと小さくちぎられたパンを小皿に乗せてくれた。
隣で神父様がお祈りを捧げて、ボクは最後の「アーメン」だけを復唱した。
普段はお祈りなんてしないけど、ママは「いただきます」って言うようにとボクによく注意をする。
いっぱい走ったから、余計に食事が美味しくて夢中になって食べた。食べ終わるのを見届けると、神父様は小さな灯りだけを残し「では、おやすみなさい」と優しい笑顔で部屋を出て行った。
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