無彩色な世界

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 静かなエンジン音のみが車内に響き、先ほどとは打って変わって静寂の空間が形成されていた。初めに目的地だけを伝え、それからは誰も口を開いていない。やや厳つそうな運転手のおっちゃんがこの狭い空間に居ることもあり、中々に話を切り出しにくい状況が出来上がっていた。  そんな中、彼女が細い声で口を開いた。 「あの、今日はありがとうございました。なんだか久々に気楽で楽しい時間を過ごせました。それにお仲間さんを見つけることもできましたので」  私も彼女と一緒の時を過ごして久しぶりに純粋に楽しいと思えたな。こちらこそ彼女に感謝をしなければならない。 「こちらこそ、短い時間でしたがあなたと一緒の時間を過ごせて楽しかった」 「あの、それでですね。えっと...週に1回くらい、私たちこうして会いませんか?」  彼女は膝上辺りで両指をくるくると回しながら言った。  こんな私を求めてくれる人がいるなんて。感動による衝撃が頭をガンガンと締め付け、思考回路をショートさせる。 「あ、あの。聞いてます?」 「ああ、すまない。こんな私で良ければ、是非ご一緒させてください」 「なんだ、びっくりした。一瞬断られるかと思ってひやひやしましたよ。あとそうだ、お名前! 何故か私たちここまで一度も自己紹介してなかったですね。私は水野 都って言います」 「水野さんですか。私は大浦と言います。よろしく頼む」 「大浦さんですね。よし、覚えました! ではこれからよろしくお願いしますね」  こうして私たちは週に1回、どこかで一緒の時間を過ごすことになった。また今日の出来事をきっかけに、平日帰宅時のバスでは席を隣同士で座るようにもなった。
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