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1.家にダンジョンが落ちました。
どうも。私はアルバイターの伊川萌愛です。今年で19歳ですね。好きなものは蜜柑と火炎放射器です。
まぁ、それはそれとしてですね。世間は今、ほんの少しだけ大変なことになっちゃってるんです。
原因は、ダンジョンの出現です。
ダンジョン。そう、あのダンジョンです。ゲームとかでよくあるアレのことです。
ダンジョンは、2年ほど前から、世界各地に出現し始めたんです。
あんなファンタジーな概念が、現実に出てくるんだってびっくりしました。
2年もたった今では、ダンジョン探検家という職業ができるくらいに社会に馴染んでるわけなんですけど。
で、その「出現し始めた」というのはですね。ダンジョンは至るところに、前触れもなく現れるらしいんですよ。
路地裏とか、ビルの屋上とか、ジャングルのど真ん中とか。
気になるのはその中身なんですが、ダンジョンの中には、魔物が居るそうです。ゴブリンとかミノタウロスとか、そんなヤツらです。
ファンタジーですね。
因みになんですが、魔物はダンジョンの外には出てこれません。入り口で謎の壁に阻まれてしまうそうです。安心です。
それでですね、ダンジョンにはまだ不思議な事がありまして。人間がダンジョンに入ると、特殊な能力が使えるんです。
つまり、俗に言うスキルってヤツですね。火の玉を飛ばしたりとか、空を飛んだりとか、そんな感じのヤツです。
ファンタジーですよね。
で、です。そのスキルというのは、一人一人能力が違うらしいんです。
自分だけの特殊能力ですよ。興奮しますよね。ワクワクです。
でもですね、残念な事に、そのスキルっていうのは、ダンジョンの中でしか発動しないらしいんですよね。魔物と同じ感じです。
たとえダンジョンの中でスキルが使えるようになったとしても、現実でやろうとしても何も起こらずに、ただの痛い人になっちゃいます。
あ、今までずっとダンジョンが現れたって言ってましたが、正確にはダンジョンの入口が現れた、ですね。
ダンジョンの入口って門みたいな形をしてるんです。
地獄の門です。あの重厚で不気味なかっこいい美術品のヤツです。
まぁ、ダンジョンが現れたって言われたら、地獄の門みたいな観音開きの門だけがぽつんとが置いてあると想像してください。
その門を開けて、くぐればダンジョンの中に入れるって寸法です。
で、なんで今ダンジョンのおさらいをしているかと言いますとですね…………
えと………自宅がダンジョンに潰されちゃいました。
「……………ま、マジですか……」
高さ約2.5メートル、現実離れした石造の重厚な門。
それにペシャンコに潰された、築80年越え、平家の日本家屋。
その前で呆然と立ち尽くす、19歳アルバイター。なんとも奇妙で非現実的な、目の前の現実を、受け入れる事ができなかった。
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