6.彩和さんだけです。

1/3
前へ
/19ページ
次へ

6.彩和さんだけです。

 今日は、夏さん彩和さんが来る日です。  ジャコウギルドさんのものになるダンジョンの事前調査と、この前決めた第二階層攻略のためですね。  恐らくそのダンジョン攻略前か後には、家で休むと思うので、お菓子を大量に用意しています。  主に彩和さん用ですね。  本当にめちゃくちゃ食べるんですから、あの子。図々しいですよ。  という事で、私は今日のダンジョン攻略に備えて、準備運動のうろ覚えラジオ体操をしているわけなんですが……。  ピーンポーン  おや。来たみたいですね。 「はーい。今開けますー。」  玄関まで急いで行き、ドアを開けると、そこには、彩和さんがいました。  彩和さん一人だけが。 「萌愛、久しぶり。」 「お、お久しぶりです、彩和さん。」  あれ?夏さんはどうしたんでしょう。 「えと……、夏さんは……?」 「夏は急用で来れなくなった。今日は私1人。」 「そうなんですね。とりあえず、中入ります?」 「助かる。」  そう言って、玄関から彩和さんを家の中に入れます。  ちなみに玄関の横は、ダンジョンのせいで壁がガラ空き。つまり入りたい放題なわけです。  だから別に、律儀に玄関から入る必要はないんですよね。  玄関じゃない場所から家に入るのって、なかなか背徳感みたいなのがあって、いいんですよ。黒崎さんも、最近は壊れた壁から入ってきます。  まあ、彩和さんも、律儀に玄関のインターホンを押してくれたわけですし。今日はちゃんと玄関を使いますが。 「じゃあ、ここでちょっと待っててください。」 「わかった。」  彩和さんを、以前と同じく私の部屋に案内し、お茶を入れに行ます。  彩和さんと二人きり。何を喋ればいいのかわからないので、結構無言の時間が多いんですよね。  この前は、夏さんがずっと話し続けてくれてましたし、それに夏さんって、なんでも受け止めてくれそうな雰囲気があって、私も安心してお話ができたんですよね。  だから、この前はこんな気まずさはなかったんですけどね。  彩和さん自身も、夏さんがいた時より口数が少ないですし。というか、私が話しかけた時以外喋ってないですし。  お話、したくないんでしょうか。  もしかして私、ちょっと嫌われてます?  いや、そんなことはないですよね?  ない、ですよね………?
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加