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2.私は霧の魔女です。
準備はできました。
さあ、ダンジョンですっ。
いざ門を前にすると、威圧感が凄いですね。
なんと言いますか。この世ならざるオーラってものを放っている気がします。
「うーん………」
改めて本当に不思議ですね。どうしてこんな物が突然降ってきたのでしょうか。
どういうメカニズムで現れて、こんな不思議なことが起こってるんでしょうか。
赤点ギリギリだった私が、科学者をも唸らせるファンタジーに理屈を付けようとしても無理がありますが。
それにしても、よく見ると細部まで装飾が凄いですね。
悪魔的な模様が、門の枠と扉の全体に張り巡らされていて、とてもかっこいいです。その気になれば永遠に見ていられますね。
美術品としたら一体いくらで売れるでしょうか。図画工作の通知表1だった私には計りかねますが。
まあとにかく入ってみましょう。
「にゃん」
猫の鳴き声。これは黒猫の黒崎さんですね。
あ、いました。いました。真っ黒の艶のある毛。今日も可愛いですね。
「黒崎さんもダンジョン、入りますか」
「にゃん」
肯定の返事。よかったです。
ダンジョンに一緒に連れて行くのは危険ですが、動物の生存本能を舐めてはいけませんからね。
私一人で行くより、黒崎さんと二人のほうが生存確率アップなのです。
ふっふっふっ。悪いですが、黒崎さん。あなたのその野生の力、ダンジョン攻略に利用させてもらいます。
と、そのまえに。
「中はどうなっているのでしょうか」
敵地調査は大事です。
門を軽く押すと、ギギッと音を出して勝手に開いてくれました。結構簡単に開くんですねこれ。
えと………門の外から見る限り、中は薄暗い洞窟のようですね。壁に松明がかかっているので、真っ暗ではないですが、かなり暗いです。若干声も反響しています。
………魔物の姿は見えませんね。
一応念の為さっき物置で見つけた木刀、それと懐中電灯も取り出しておきましょう。
「では、入りますか」
「にゃー」
ダンジョン入場です。ドッキドキですよ。
はてさて私にどんなスキルが宿るのか。どんな冒険がまっているのか。楽しみです!
さあ、門をくぐりますよ。
せーのっ!
はいっ!
うわぁ、なんか門を通った瞬間ゾクっときました。黒崎さんも毛を逆立てています。
この洞窟、思ったより暗いですね。松明の赤い光だけじゃ限界がありますからね。今は門から外の光が入ってきているのでまだマシですが、奥に入るとだいぶキツいと思います。
懐中電灯のありがたみがわかりますね。文明の利器は最強です。
さて、せっかくダンジョンに入ってきたのですから、ドキドキのスキル確認タイムといきましょう。
確かダン検の人は、本能で自分が出来ることがわかる、とテレビで言っていました。
本能。どう言う事ですかね。
とりあえずやってみます。
………
………
……………あっ!
「なんかビビッときました!」
えと………手を前に掲げて……、唱える!
『身を陰す霧』
うおおおおおおおお!
霧が!霧が出ましたよ!魔法みたいに!
一寸先が見えないくらいすっごく濃い霧が、私の腕をゾクゾクっと通って放出されました。凄いです体験ですよ。
これで、私はダンジョンでは霧の魔女ですね。
テンション上がりますぅ!
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