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あっという間に、今日の営業時間も終了間近となった。
今の時刻は22:00
そろそろ、後片付けを始めようとしていた時、その人物は現れた。
「あの、今からでも入れますか?」
キャップを深く被り、マスクをしているが、流行りに疎い私でも、その人の名を知っていた。
「いらっしゃいま、ませ。大丈夫です。」
思いがけない来客に私の声は裏返った。
知らないふりをするべきか、本人に言うべきか悩んでいると、相手の方から声を掛けてくれた。
「前からここの銭湯が気になっていたんです。俺、サウナ巡りが趣味で。」
「そうなんですね。」
私は動揺を悟られないように平静を装った。
「今日はこっそりホテルから抜け出して来ちゃいました。」
「それって大丈夫なんですか!?」
私は思わず大きな声を出した。
「すみません。つい...」
「大丈夫です。マネージャーに連絡しておきます。」
「はい。」
すると、彼はポケットからスマートフォンを取り出して、電話をかけ始めた。
「これで大丈夫です。」
「よかった。」
私は安堵の表情を浮かべた。
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