Fortune Hair

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 それから私は秀吉を旦那候補として見るようになった。見かけは悪いが頼りになる。買い物にも付き合ってくれる。私が決めかねていると「これがネネには似合うよ」と言ってくれる。何となく私もそう思っていたから好みも一緒だ。  家は田舎で農業をやっているという。決して裕福ではなさそうだ。でもデートでは食事代もホテル代も自分で払い、私には絶対に出させない。 「たくさん働いて両親も一緒に住める大きな家を建てたい。一国一城の主になるんだ」  夢を語る秀吉は大きく見えた。私もその夢を応援したくなってきていた。 「秀吉ならなれる。絶対になれる。頑張ってね」 「ありがとう、頑張るよ」  秀吉は有言実行の男だった。営業をしていた秀吉はその真面目さと押しの強さでどんどん顧客を増やしていった。その後企画部に部署替えになったがそこでも画期的な提案をたくさんし、業績を上げていった。  出会った頃は食事といえば居酒屋やファミリーレストランだったが、最近はそれなりのレストランに連れていってくれるようになっていた。そしてホテルも以前は安い連れ込み旅館だったが、今夜ははオシャレなシティホテルに連れて来てくれている。 「秀吉出世したね。凄いよ」 「いや、まだまだ上を目指すよ。一国一城の主になるんだ」 「社長を目指してるの?」 「うん。まあ今の会社は一族経営だから無理だ。だからいつか独立して自分の会社を作りたい」 「秀吉なら絶対なれるよ」 「ありがとう。頑張るよ」  秀吉は私を力強く抱きしめた。秀吉の胸に顔を埋めた。肩には透明な福毛がゆらゆら揺れている。前見た時よりも太く長くなっていた。
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