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その逢瀬を最後に、私と秀吉は別れた。あれから秀吉がどうなったかなんて興味はない。私を裏切りやがった男なんてどうでもいい。
ただ風の噂では、あの会社の娘は何処ぞの資産家の御曹司と華燭の典を挙げたと聞いた。福毛を失くしたらそんなものなのだろう。ザマアミロ。天罰だ。
私は相変わらず男を取っ替え引っ替えしていた。でもみんな顔は良くてもロクでもない男ばっかりだった。
秀吉みたいに大きな夢を持ってがむしゃらに突き進むような男には出会えなかった。
何処かに顔はともかくとして、一国一城を目指す気概のある男はいないものだろうか。
そんな事を考えながら会社を出た。会社の前には外車が停まっていた。邪魔だ。でもどんな人が乗ってるんだろう。
すると車から男が降りてきた。
「秀吉!?」
立派なスーツを着て照れ臭そうに微笑んでいた。
「久しぶりだね」
何でここに?
「1人?」
「見れば分かるでしょ」
「だったら夕飯でもどう?」
数分後、私は秀吉の車に乗っていた。
「今彼氏はいるの?」
「さあ。そちらこそ逆玉のはずがどうしちゃったの?」
「はは。断ったんだ」
「えっ、断った?」
車は郊外の空き地に停まった。
「何で断ったのよ。結婚すれば将来は安泰だったのに」
「好きでもない人とこれからの人生過ごすなんて無理だと思った」
「じゃあ何ですぐに戻って来なかったのよ」
「出世のためとはいえ、迷ってしまった自分が恥ずかしかったんだ。ネネに合わせる顔がなかった」
「そんなの……」
まあ、そんな簡単に許すわけ、ないじゃん。
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