第二章:鬼の哭く街

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「嬢ちゃん‼」  ツクネの窮地を救ったのはカリンだった。 「ナイスや! 嬢ちゃん。助かったわ」 「……別にお前を助けた訳じゃない」  カリンは二刀の小太刀を抜くと改めて鬼面の男の方に構えなおす。 「こいつに借りがあるだけだ」 「……素直じゃないな」  ツクネは立ち上がってカリンの背中につぶやく。まだ足元はふらつく。鬼面の男も立ち上がり、カリンの方むけて刀を構えていた。 『妖怪の童か、食事の邪魔だ……去ね!』  刀から低くうなるような声が聞こえる。 「嫌だね! あたしはこないだの続きをやりに来たんだ」  カリンはそういうと大きく跳躍した。そのまま両手の小太刀を振るう。一撃目は刀で受けられたが間髪入れずに二の太刀、三の太刀と振るう。一太刀ごとに速度の上がるカリンの斬撃を男は受けながらも衝突の際にグッと腰を入れる。  見た目はカリンが押しているように見えるが、受けの際にタイミングよく押し返されていつの間にかカリンが後退させられている。その攻防の中、カリンは……やっぱりと思う。この体さばき、太刀筋、あいつと似ている。  いつの間にか攻防が逆転している。衝撃でバランスを崩すカリンに男の斬撃が襲う。その一太刀、一太刀が重い。もちろん妖怪化による力もあるが、それと同時に剣術としても体の使い方がうまい。何撃目かを受けたとき右手の小太刀がはじかれる。  とっさに後退しながら、空中に跳躍して距離を取ろうとするが、そこに鬼面の男の妖怪化した右腕の刀が伸びてくる。カリンは残った左手の小太刀で受けようとする。しかし、男の刀の勢いに残った小太刀も弾き飛ばされ、今度は先程とは逆側の塀にカリンが叩きつけられる。 「嬢ちゃん‼」  崩壊したがれきの方に向かってツクネが叫んだ。するとすぐにそこからカリンが飛び出てきた。塀の破片の一部が肩のあたりに食い込み、出血しているが、まだ元気そうなカリンを見てツクネはホッとする。 「嬢ちゃん、大丈夫かいな?」 「……あの野郎。ぶっ殺す!」  カリンの周りの空気が揺らぐ。カリンを中心に空気が収束していき、炎の尾のような物ができる。カリンが体をひねると、それは輪のようになり、鬼面の男に轟音をたてながら飛んでいった。男を中心に闇夜が炎に照らされる。  男は迫りくる炎の輪に対して、刀を激しく振るう。風圧で炎の輪に隙間ができて、そこに男は体を滑らせる。炎の輪の一部は先ほど男がぶつかって崩壊したがれきにぶつかり、火柱をあげている。
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