初恋

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秋の夕暮れ 「れんちゃん、遊ぼ!」 家の近くの公園で砂遊びしていると、ようこちゃんから不意に声をかけられた。 ぼくは少しびっくりして振り返る。 「なにしてるの?」 ようこちゃんがぼくの手元をのぞき込んだ。 「穴を掘ってるんだ」 砂の中から手をぬいた。 「たくさん掘ったのね」 「うん、トンネルを作ってるんだ」 「あたしも手伝っていい?」 どうしてだろうぼくはすこしためらった。 「あたしじゃましちゃった?」 「え、そんなことないよ」 「れんちゃん、さいきんあんまり遊んでくれないね」 「そっかなぁ」 ぼくは胸が少しドキッとした。 「遊びましょうよ」 「う、うん」 「あたしも砂ほりしていい?」 「いいよ。反対側から深く掘ってよ」 「トンネル作るのね」 「そうだよ!」 ようこちゃんも砂場に座り込んで穴を掘り始めた。 ぼくもどんどん掘り進める。 気がついたら太陽が赤く染まっていた。 やがてぼくの指先がようこちゃんの指に触れた。 「トンネルの完成ね!」 「つながったね!」 ぼくとようこちゃんはトンネルの中で手を握り合った。 ようこちゃんの手がとても温かく感じた。 目と目が合った。 瞳がきらきら輝いていた。 ぼくは心の中に特別な感情を発見した。 とたんにぼくの顔は真っ赤になった。 「れんちゃんどうしたの? 急に無口になって」 「な、なんでもないよ」 ぼくはそう返事するのがせいいっぱいだった。 ふたりで作ったトンネルをぼくのほっぺたのように夕日が真っ赤に染めた。                                おわり
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