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「え~~ハーピィが送ゆの~~?」 「お願いハーピィ、あなたしかいないのよ!」  うららかな正午時、ヒトとサキュバスとハルピュイアイとドラゴン。私はハルピュイアイを言いくるめようとしていた。 「今度はハーピィが食べやえちゃう」 「ハーピィは強いから簡単にそんなことにはならないわよ! それに彼女、誰でも襲うような悪い子じゃあないのよ? ほら!」  私は傍らのサキュバスにハグをした。頬と水面をくっつけながら何もするなと念を送る。流石に自分の置かれている状況を鑑みてなのかサキュバスは指一本動かさなかった。冷や汗をかいた。「しょえなや分かったよう」というハルピュイアイの声を聞いてとてもほっとしたが、今度は夫の視線が気になるところだ。  ハルピュイアイに歩を寄せたサキュバスがこちらを振り返る。”水球の器(アクアリウム)”の手枷の付いた手首がくるりと回ったと思ったら、掌の中に紗の包みが出現した。ガボガボと泡を吐き出す唇は”あげるわ”か”ごめんね”という動きをしたので慎重に受け取る。存外軽いそれを受け渡した掌をひらひらと振ってハルピュイアイを覗き込んだ彼女は、怪鳥化したハルピュイアイに乗せられやがて見えなくなっていった。 「行ったな」 「行きましたね」  包みのリボンが揺れて、自分がため息をついたことに気付く。たった半日で何だかとても疲れてしまった。  と、スピカが背後から私を抱きしめる。すんすんと首筋を嗅がれてくすぐったい。 「女というより、、、男のにおい。インキュバスか……襲われた?」  そう言った。  未遂ですよ、と見やると拗ねた顔の彼と目が合う。瑠璃とアクアマリンがかち合う。目を逸らしたら悪い方向に勘ぐられる、悪戯に彼を傷つけるのは本意でないので瑠璃を見つめ続けた。  やがて小さく息を吐きながら彼が問う。 「どうだった? きみの目で見たサキュバスは」 「そうですね……実際悪い子ではないと思いました。話せましたし。……ただ、また会いたいかと言われれば、しばらくいいかな、って感じです……」 「だろう? 何でか疲れるよな。話題が話題だからだと思うけど……ところでこれ、上書きしたい。今日、触れていい?」  首筋に鼻先を埋めながらかけられた、ストレートなお誘いに一気に血流が巡る。そんな自分を誤魔化すように、まずは湯浴みに行かせてほしいと、褐色の頬にキスをした。 ――  ところで、いただいた包みの中身は薄水色の、シースルーのブラスリップだった。折角なので着てみたところ、スピカが鼻血を出してしまったためこれはクローゼットの奥に封印となった。  尚、ムロウさんとメイさんはそれから5日間は部屋から出てこなかった。 [The story goes on.]
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