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「キャプテン、四番を譲るくらい村中くんに期待してくれてんだね」
「ありがたいです、本当に」
「死ぬ気でやらねばね?」
「え?」
「文字通り、死ぬ気でやらねばなんないしょ。キャプテンが譲るってんだもの、村中くんにチームの全部が乗っかったようなもんだよ? 譲ってくれたキャプテンに恥かかせられないっしょ。まあ、安心してて。あたしがサポートするから」
「……はい」
サポートの内容を想像し、返事から生気が抜けていることに気づかれてしまったのか、芙蓉先輩の形のいいプルンっとした唇からチッという舌打ちが漏れた。
「気合い入れれよ、村中くん!」
「はいいいいっ!」
「腹から声出せ!」
「オ――――ルルルルルルァイ!」
「いいね、その調子だど、村中くん! オ――――ルルルルルルァイ!」
「ウッス! オ――――ルルルルルルルルルルルルァイ!」
夕暮れのグラウンドに響き渡った僕の声に目を細めて親指を立ててくれた芙蓉先輩の笑顔は、西陽に照らされていつにも増して眩しくて。
この人が喜んでくれるなら、ハードケアだって乗り越えて行けそうなそんな気がしたそのすぐ後。
「あ、石山田くん、今ちょっといいかな?」
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