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アレクと秘書はほとんど立ち尽くしていて、言葉を発することが出来ない状態だった。
「あなたは車に乗って帰ってください」
ユンソルは顎に垂れる汗を拭いながら、秘書に告げた。秘書はアレクをちらりと見たが、アレクが力なく頷いたのを見てベンツに乗っていった。
「私の不注意でした」
走り去るベンツを見ながらアレクはつぶやいた。ユンソルはこまめに弾倉に減った分の弾を装弾しながら、彼に何を言おうか考えた。そしてやめた。
大通りに出ていくなか、ユンソルはアレクの脇に腕を通してエスコートしていく。ホルスターのベルトを固定せずに、手をやればすぐにグロックが抜ける状態にしている。
彼らが大通りで信号待ちをしている間に、路肩に停車しているグレーのBMW x6をみつけた。ナンバーはQ。ユンソルはアレクの腕を引いて、その車の前にやってきた。
G-markを鍵穴に翳そうとして引っ込めた。車の対向車線側に停まっているフォード車から照準器が覗けたのだ。ユンソルはまたしても、アレクをその場にしゃがませてルーフからフォード車を狙った。
次はニ発撃ち込む。
一発目は照準器を割り、二発目は車窓を貫通して狙撃手の胸を撃ち抜いた。血しぶきがあがった後部座席を見やり、ようやくドアを解錠した。
「乗ってください」
まだアスファルトに伏せているアレクを不思議そうに見下ろしながらユンソルは言った。
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