episode 40 盾となれ

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後部座席のドアを開けると、汗で前髪がぐっしょり濡れたアレクが蹲っていた。ユンソルはだまってドアを閉め、運転席に乗り直した。 「発車しますよ」 ユンソルはシートに座るように呼びかけたつもりだが、アレクはまだ放心状態でシートの上にしゃがんでいた。 ユンソルはこれ以上何も言わずに車を発進させた。走り始めて30分も経つと、アレクが我に返ったようにシートに座り、「どこに向かってるんだ」と聞いた。 「あなたのために用意されたセキュリティの堅いホテルです。 24時間体勢で警備がつきます。」 「君はどうする」 「……俺は…」 ユンソルは赤信号で車を停めて、何も言わなかった。アレクは咳払いをしてシートに寄り掛かる。 「本当は自業自得だと思ってるな」 アレクはユンソルの真意を覗き見たような口振りで言ったが、彼は目だけ合わせた。 「どうなんだ」 「護衛の対象人に対して、何の感情も持ちません」 「それはマニュアルだね」 「もちろん」 「君の答えを聞きたい。 マニュアル通りの人間を 僕は一人しか見たことがないからね」 ユンソルは青信号で車を発進させた。 「じゃあ、俺が二人目になります。 俺はマニュアル通りです。」 「違うね。 うそをついてる人間は仕事柄、分かるんだ。 君はウソをついてる。」 「…………」 ユンソルの目はルームミラー越しにアレクを見た。 「マニュアル通りって言った… 一人目は誰か聞いていいですか」 アレクは窓の外に目をやり「何の感情も保たないでいい」と言った。ユンソルもそれ以上聞くことはしなかった。 しかし、ユンソルの目がルームミラーから外れない。アレクが「何を観てる」と聞き返した。
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