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偵察隊のハイドとニコルは、ホテルのロータリーに待機している。フットライトが三箇所点灯しているだけで、暗がりの中ではホテルの存在が見えにくい。
一般客は敢えて出さずに、アレクを紛れ混ませる作戦である。彼らはお互いに目配せをしながら、ホテルの周辺を確認していた。
部屋にいる偵察隊に、市内に仕掛けたソケの映像を確認させている。30分前にラウンドクルーザーが炎上している映像がソケに映された。
(Qナンバーの配車にラウンドクルーザーは無かったはず…)
燃えている映像のために車体ナンバーは見えなかった。時々配車の車両にラウンドクルーザーを使うため、彼らの不安を煽った。
他にもBMWとフォードが撃ち合いをしている映像が出た。上手く町の監視カメラから逃れている足跡を辿ると…
(ユンソルさんがBMWかも)
偵察隊への配慮が最もあるユンソルが、任務中に町の監視カメラに映ることはなかった。BMWはソケにだけ映っていて、他の監視カメラはキャッチされていない。
ニコルが通りの向こうを見て、ハイドの名前を呼んだ。
「来たか」
「はい!QナンバーのBMWです」
(やっぱり…)
ハイドは口元を緩めたが、すぐに顔を引き締めた。ロータリーにやってきたBMWのフロントガラスは目立つほどにヒビが生えている。
運転席の窓は全開になっていて、ユンソルが顔を出した。シートに弾痕があったり、ダッシュボードの蓋が外れているのを見ると損壊が激しい。
「ごめんね。約束より待たせたね」
「大丈夫です。
お怪我はないですか?」
ユンソルに聞きたいところだったが、保護対象者の手前なのでアレクに聞いた。アレクはまだフワフワした状態で、こくりと頷いた。
「お部屋に案内します。どうぞ。」
ニコルがドアを開けると、アレクはすぐに降りなかった。一歩外に出れば殺されてしまうと思っている。
「あの…」
ニコルが戸惑うと、アレクがジロリと睨んだ。
「降りれるわけないだろ。
ちゃんと見たのか?
本当に、このホテルに敵はいないのか?
君達はなんなんだ!」
アレクが怒鳴ると、ユンソルが「しー」と息を吐いた。まるで子供をあやすようなやり方に、アレクは目を吊り上げる。
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