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「おとうさん…!」
その時、院長室のドアが開いてセラピストの娘が飛び込んできた。しかしあっという間に胸に穴が空いて、前のめりに倒れた。カーペットに赤黒いシミが広がる。
彼女の後ろから、拳銃を持ったアリスが出てきた。
ケイは拍手をして、アリスを迎え入れた。アリスは相変わらず無表情で彼女の体を跨ぐ。まだ僅かに息があり痙攣していたが、アリスは彼女の頭を吹き飛ばした。
エルが悲鳴をあげ、院長も呻き声をあげる。
アリスはエルに拳銃を向けた。
ところがケイがエルを庇うように前に立ち、銃口に指をあててそらす。
「まだ必要?」
アリスは抑揚のない声でケイに尋ねた。ケイは笑顔でアリスを見つめていて「もちろん」と答える。アリスはしばらくケイを見ていたが、やがて納得したように拳銃を腰にさした。
エルは「わあ!わあ!」と単調な悲鳴をあげつづけている。その目は見開かれ、床にふせている彼女の死体をみていた。
「トラウマってね…脳に植え付けるものなんだ。」
ケイはソファに腰掛け、片膝を組み、横柄な態度で院長に説教する口ぶりをした。
「植え付ける…?」
院長が掠れ声で聞く。
「そう。
僕も例外じゃない。
幼い頃に、トラウマを植え付けられている。」
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