episode 60 不完全なモノたち

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「おとうさん…!」 その時、院長室のドアが開いてセラピストの娘が飛び込んできた。しかしあっという間に胸に穴が空いて、前のめりに倒れた。カーペットに赤黒いシミが広がる。 彼女の後ろから、拳銃を持ったアリスが出てきた。 ケイは拍手をして、アリスを迎え入れた。アリスは相変わらず無表情で彼女の体を跨ぐ。まだ僅かに息があり痙攣していたが、アリスは彼女の頭を吹き飛ばした。 エルが悲鳴をあげ、院長も呻き声をあげる。 アリスはエルに拳銃を向けた。 ところがケイがエルを庇うように前に立ち、銃口に指をあててそらす。 「まだ必要?」 アリスは抑揚のない声でケイに尋ねた。ケイは笑顔でアリスを見つめていて「もちろん」と答える。アリスはしばらくケイを見ていたが、やがて納得したように拳銃を腰にさした。 エルは「わあ!わあ!」と単調な悲鳴をあげつづけている。その目は見開かれ、床にふせている彼女の死体をみていた。 「トラウマってね…脳に植え付けるものなんだ。」 ケイはソファに腰掛け、片膝を組み、横柄な態度で院長に説教する口ぶりをした。 「植え付ける…?」 院長が掠れ声で聞く。 「そう。 僕も例外じゃない。 幼い頃に、トラウマを植え付けられている。」
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