17人が本棚に入れています
本棚に追加
「トラウマは本性の種になる。
あなたや娘は、エルの土を掘り起こして種を摘み取ろうとした。」
院長の目は虚ろだ。
エルは目をぎゅっと瞑りながらも、ケイの言葉を聞いている。
「でも無駄だよ。
その種には太い根がついている。
あなたや娘が彼に出会う前に、
俺がたっぷり根に栄養を与え、
誰にも摘み取られないように強くした。」
「彼は…お前に怯えている」
院長は息の多い声で言った。
アリスが動いたことに院長は警戒したが、アリスはドアを閉めて、壁に背を預けているだけだ。
「如何にも」
ケイは否定しなかった。
「でも安心してるよ」
エルは顔をあげて、ケイを見た。
同時にケイもエルを振り向いて見つめる。ニコッと微笑んだあとに、エルに続けて聞いた。
「エル。
俺より怖いものなんか、ないもんな?」
最初のコメントを投稿しよう!