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大きくもない目だったが、白目の綺麗な目がそこにある。瞼は腫れぼったいが、ちいさな黒目がまっすぐ老人を見ている。刺すような視線だった。
「俺を見ろ」
老人はしばらく動けなかった。
蛇に睨まれたような気分だった。男から開放されると、老人は大げさに深呼吸をした。
「お前さん、何者だい」
老人が息継ぎをしながら聞くと、男は頭を振った。
「何者でもない。」
「その男を探して、どうする」
男はとうとう後部座席に座り、あぐらをかいた。
「最初こそ、ぶち殺してやろうと思ってた。」
「まさか」
「本当だ。おれはできる。
そういうことをしてる奴だからな。
占い師なら、オーラで分かるもんだろ。」
「危ないやつなのは間違いないと思ったがね、
人を何人殺したか…ましてや人殺しかどうか、
それまで見分けられんよ。」
「そういうもんか」
男はあっさりした喋り方で、老人の生き死になど興味はないようだった。ただ自分の目的しか興味がない。
「それで?」
老人が言葉の続きを聞く。
「なんだ」
男は見当もつかないように聞き返した。
「ぶち殺さないで、どうするのか聞いているんだ」
男は思い出したように「ああ」と前置きした。
「生かして連れて帰る。なるべく五体満足。
円満に連れて帰りたい。」
老人は青年の意思とやらが男の思うままになりそうにないと危惧している。占い師だから分かるんじゃない。
この男は危険だと、彼ですら分かるだろう。
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