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足音は呆気なく通り過ぎて、違う部屋のインターホンを鳴らす。割れたような音が外廊下を走り回り、ドアの前に立ち尽くしているチソンから緊張を取り払う。
ルイは怪我をした指を水道水で洗い流し、それから割れたグラスと破片を入れたポリ袋をベランダに出した。窓を横に開けた瞬間、ルイは何かに弾かれたように吹き飛ばされた。
ルイの体は宙に浮いて、ベランダの前から冷蔵庫に頭をぶつけて仰向けに倒れる。冷蔵庫の扉にはべっとりとした血がついていた。
チソンは意識が朦朧としていき、ルイのそばに近寄った。ルイは仰向けのまま動かない。ベランダのそばに、破片の入ったポリ袋が落ちている。窓から差し込む夕焼けに、ポリ袋の断面が光って眩しい。
その夕日の輪郭が彼らを隠してくれる。
光の中に体をすっぽり埋めて、ルイの顔を隠している前髪をかきわけた。髪の毛がべっとりと額に張り付いていて、ほぐした彼の指には血が纏わりついていた。
「ルイ」
名前を呼んでみた。
彼女の目は開いていたが、瞬き一つしない。
その瞳から色が、光が、信じていたものが消え失せよっとしていた。
「ルイ」
チソンはそれをかき集めることができない。だから名前を呼び続けて、彼女の魂まで奪われないように努めた。
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