episode 60 不完全なモノたち

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ブッチの方から声が聞こえなくなった。 チソンは恐る恐るソファから体を起こして、ブッチがいた吹き抜けを見た。そこにブッチの姿がない。 落ちたのか。 真下を覗き込んでも、ブッチはいなかった。 そして火を吹いていたライフルさえ無くなっていた。 「ここだよ、ここ」 声がしてギョッとする。ブッチは吹き抜けの壁越しにしゃがみこんでいた。チソンの弾が空けた壁の穴を指差し「まだまだ現役だな」という。 「戻ってこい、チソン」 チソンはしばらく突っ立っていたが、やがて窓を開けてベランダに出てきた。それからベランダの手すりに足をかけて、そこに腰掛けた。一瞬ブッチがギョッとした。今は彼の意図が分からない。   「俺はケイが嫌いだ!!!」 チソンは怒鳴った。 ブッチはポカンとしていたが、我にかえると「知ってるよ」と返した。 「ケイはお前を求めてる」 「……………」 ケイ。 それは絶対的な存在であり、そこにいるのに不確かでもあり、不安でもある。 ケイより他に怖いものを知らない。 「ケイはお前を取り戻したいんだ」 「俺は物じゃねえ…!」 「物だ。」 ブッチは言い返した。チソンは唖然とした。
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