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ブッチの方から声が聞こえなくなった。
チソンは恐る恐るソファから体を起こして、ブッチがいた吹き抜けを見た。そこにブッチの姿がない。
落ちたのか。
真下を覗き込んでも、ブッチはいなかった。
そして火を吹いていたライフルさえ無くなっていた。
「ここだよ、ここ」
声がしてギョッとする。ブッチは吹き抜けの壁越しにしゃがみこんでいた。チソンの弾が空けた壁の穴を指差し「まだまだ現役だな」という。
「戻ってこい、チソン」
チソンはしばらく突っ立っていたが、やがて窓を開けてベランダに出てきた。それからベランダの手すりに足をかけて、そこに腰掛けた。一瞬ブッチがギョッとした。今は彼の意図が分からない。
「俺はケイが嫌いだ!!!」
チソンは怒鳴った。
ブッチはポカンとしていたが、我にかえると「知ってるよ」と返した。
「ケイはお前を求めてる」
「……………」
ケイ。
それは絶対的な存在であり、そこにいるのに不確かでもあり、不安でもある。
ケイより他に怖いものを知らない。
「ケイはお前を取り戻したいんだ」
「俺は物じゃねえ…!」
「物だ。」
ブッチは言い返した。チソンは唖然とした。
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