【『はらいや代行』シリーズ・焦げ付いた呪い】

はじまりはじまり

　⑤かくして。田村千景（たむらちかげ）先生は、正式にこの学校を退職し。
　どこかで聞いた話では、不登校の子供を集めたフリースクールの職に就いたとかなんとか。

　そして、彼女がこの学校を退職する寸前、わたしの父と母は、非公式ながらも、自身の罪を認めて頭を下げた。

　そしてその流れというか、その際に、わたしにも、田村先生はきちんと謝罪した。

　そして、わたしはというと……。

　「今日は、ヨモギ蒸しパンにしてみたの」

　「しっかり食べて、きっちり払おうな」

　坊主頭のイケメンと、ピンクのストールの美少女が、

　毎日のように、隣のクラスのわたしに食べ物を貢ぎに……いや、たまった、『呪いという名の負債』を解消すべく、『陽の気』であふれたお支払いで完済するため、なんと鈴本美芳（すずもとみよし）さんの手製のお菓子やら、料理やらを手ずから与えられるという……目も頭もくらみそうな幸福な毎日だったりする。

しかし。

「あれ、ちゃんとカロリー計算とかできてるのかしら？」と美意識のかたまりである麻由里（まゆり）ちゃんは、首をかしげているし、「衛生管理とか…大丈夫なのかなぁ？」と七々恵（ななえ）ちゃんも心配の視線がイタイ。

　カロリーけいさん？

　えいせいかんり？

　わたしもわたしで、体系が丸くなりそうで正直怖い……。

　でもでも、これが幸せ太りってやつか……なんて。思ったりなんかして……。

　今日も、（ある意味ノルマの）美味しいよもぎ蒸しパンをもぐもぐしつつ、これぞ本当の意味で、幸せをかみしめるのであった。