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はじまりはじまり
【『はらいや代行』シリーズ】
鈴本美芳(すずもとみよし)…料理を作るのが得意な隣のクラスの女子。その料理に込めた力で、除霊したりする
三好咲子(みよししょうこ)…主人公。麻由里に言われてダイエットを頑張っているつもりだが、成長期でもあるので、あまり効果が出ていない。
園村麻由里(そのむらまゆり)…咲子の友人。読者モデル兼子役をしており、意識高め。わりと自分の意見を周りに押し付けがち
津森七々恵(つもりななえ)…口数は少なめだが、意外とみんなをよく見ている
御国真理(みくにまさと)…数少ない男子の一人で、家がお寺。クイズが得意。イケメンらしい。実は美芳の仲間で、退魔師。
田村千景(たむらちかげ)…男尊女卑タイプのお局様な音楽担当。実は、鬼に取りつかれていたため、本来の性格(気弱)とは違う行動ばかり取っていた。
【『はらいや代行』シリーズ・焦げ付いた呪い】
①わたしの学年には、超有名人が三人もいる。
一人目は、数少ない男子の一人で、いまどき珍しい坊主頭の『御国真理(みくにまさと)』くん。…おうちがお寺らしいからこその髪型だけど、それを補って有り余る、と評判のイケメン様だ。
そして二人目は。なんと!わたしの友達でもある、『園村麻由里(そ
のむらまゆり)』ちゃん。子役をするのも大変なのに、読者モデルっていうやつもやってて、いつもおしゃれや流行に敏感で。今日も、どこかのテレビとか雑誌から抜け出てきたかのようなかわいらしさ。
ちなみに三人目は……。
「咲子(しょうこ)ー?次、移動教室だよぉ」
「あ。うん、ありがと七々恵(ななえ)ちゃん」
隣のクラスへと続く、教室前のドアをぼんやりと見ていたら、もう一人の友達である、『津森七々恵(つもりななえ)』ちゃんが、音楽の教材一式を持ってニコニコとしていた。
「まゆまゆは?」
「お手洗いー」
そっかぁ。そう、ほにゃりと笑む七々恵ちゃんは、すこしおっとりとしているし、口数はけして多くないけど、わたしにとって癒しである。
いつものように抱きしめようと手を広げようとして、はたと気づいた。
……ん?…音楽?
「もしかして、今日…」
「リコーダーのテストだねぇ」
七々恵ちゃんの言葉に確信して、青くなる。音楽の田村先生は、『ダンソンジョヒ』がヒドい『オツボネ』タイプの先生なのだ。
いまなんじ?!練習の時間ある?!!
青くなったあたしの視界に、麻由里ちゃんがカットインよろしく『おまたせ』と登場して、どうしたの?と絶妙な角度で小首をかしげた。
うっ。美少女よ……天然の美をそう易々と振りまかないでくれ……!!
っじゃない!!いや、麻由里ちゃんがかわいいのはあってるけど!!そこじゃないよぉ!!!!
「麻由里ちゃん、今日…!」
「ああ。リコーダーのテストでしょ?」
こくこくこくっと赤べこよろしく頭を上下させるわたしに、麻由里ちゃんは『エセお嬢様』よろしく手を口元に持っていって高飛車に言い放った。
「おーっほっほっほっ。もちろん、アタクシ、予習はばっちりでしてよ?」
「ええっ?!!」
「ふふっ、ロケの待ち時間に練習してたのよねー。実は!それより咲子大丈夫?早く行って練習しないと…」
「わわわっ、急ご!!!!」
しょうがない子ねぇ、と苦笑する麻由里ちゃんと、これどーぞ、とわたしの教科書とリコーダー一式を渡してくれる七々恵ちゃん。
『淑女なら、廊下は優雅に歩きなさい』と礼儀作法にキビシイ担任と、そんな担任の影響を受けすぎてる学級委員の目も気にせず、早足よりももっと速度を上げて、音楽室を目指すわたしの後ろから、『まちなさいよっ』ってたしなめる声は誰のものだったか。
しかし、担任よ、学級委員よ、すまない。正直に言って、わたしはオツボネ田村があんたたちよりも!もっと、怖いんだ!!!!
スピードに乗って流れていく何気ない日常の景色の中で、一瞬。
隣の教室の、ドアの向こうに垣間見えた見慣れない景色。
ピンク色のふわふわなストールをつけた麗しい少女を取り囲むように堆く積まれた大量の手作りっぽいスイートポテトと、手焼きらしいクッキーの山。
そして、それらを幸せそうに食べてるのは、彼女ではなく……。
どの子も粒ぞろいのイケメンくんと美少女たち?!
しかもその中に、あの超有名人の『御国真理(みくにまさと)』くんまでいて、思わずぎょっとなって……足がもつれた!
そんでもって、ほぼ顔面から倒れこむわたし。
『ぎゃひっ』とつぶれた悲鳴を上げたわたしの耳に、無慈悲にも、楽しい休憩時間の終わりを告げるチャイムの音が高らかに鳴り響いた。
嗚呼、無念…。
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