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「男性が……怖い?」
ああ、楓さん。
貴女はなんて、純粋で、素敵な人なのでしょう。
私は口元をタオルで覆いながら目を伏せ、頷きました。泣きすぎて時々咳き込む様子は、切羽詰まった様子を装えていたのでしょう。楓さんが「ああ、ごめん。その可能性に気づかなくて。そっか、そうだよね……だって、すごく、怖い目にあって、間もないんだもんね……ごめん、ごめん……っ」と何度も謝りながら私を抱きしめてくれました。その胸元に、幼子のように顔を埋め、楓さんから香るせっけんの清潔な香りに包まれながら、私は口元にきつくハンドタオルを押し付けました。
にやけてしまう口元を隠すために。
誰にも、仮面の裏側が見えないように。
視界の端で、大智君が非常に傷ついた顔をしていましたが、仕方ありません。実際彼は私を傷つけるような行動をした前科があるのです。今、それを償ってもらいましょう。私だけが全てを背負うなんて、それは、平等ではないでしょう?
こうして私は、大智君という男性を酷く傷つけることを対価に。
楓さんという大きな味方をつけることに成功しました。
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