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1.そして物語は幕をあける
大帝国マジ―グランド、その都からほんの数時間離れたところには、人を寄せ付けぬ禁忌の森があった。
都の民はその森を、常闇の森と呼んだ。
広葉樹が生い茂るその森は、昼間であっても薄暗く、どことなくひんやりとした空気に覆われている。
ひとたび足を踏み入れれば、その森の異様さにほとんどの者はものの数分で踵を返す。
それでも興味本位で先へ進めば、次第にぼんやりとした霧に視界が遮られていく。
聞いたこともないような鳥や獣の声が響き、独特な甘い匂いが立ち込め始めると、いよいよそれ以上足を進める者はいなくなる。
『あの森に入ってはいけない』
『魂を吸い取られる』
『黄泉の国と繋がっている』
『恐ろしい獣の餌食になる』
そんな噂が独り歩きし、いつからかその森は禁忌の森として恐れられることとなった。
それが、王都近くに位置するリュヌの森が、常闇の森と呼ばれる所以である。
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