第一章

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 自分の名前を知っている見も知らぬ青年を前にして、宙子の頭は混乱していく。青年はそんな宙子を安心させるためか、ふわりと優し気に笑った。 「私のことを、覚えておられますか?」  そんなことを言われても、宙子にまったく心当たりはない。しげしげと男性の顔を見ても、誰の面影とも重ならない。  何も答えない宙子を責めもせず、その人はシャッポを優雅な所作でぬぎ胸にかかげた。 「あなたは、私にとって必要な方なのです。お迎えに参りました」  青年の言葉はけっして外国語ではない。日本語なのに、その内容を宙子はちっとも理解できなかった。
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