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「すぐに返事をしかねるのは道理。忠臣さまが一度お嬢さんとお会いしたいそうだ。詳しいことはご本人に訊くといい。それから決めても、遅くはないよ」
上司は宙子の方へ視線を移す。
「お嬢さんも、忠臣さまにお会いしたらその男ぶりと人柄にほれ込むこと間違いなしだ。どうかね、会ってみては」
もうとっくに会っていますとも言えず、宙子はあいまいに笑う。
「そうですね、おっしゃる通りです」
父が、宙子に代わって返事をする。その言葉を合図に、他人事のような心持ちで宙子は頭を下げていた。
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