29人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
好きなひと
わたしには、好きなひとがいる。
いつも元気いっぱいで、笑顔が可愛くて。
大好きなバスケを頑張るために、少しでも背が伸びるようにと、給食の牛乳をたくさん飲んだり、つま先立ちで歩いていたりするような頑張り屋さん。
中学一年の時に偶然隣の席になれて、その時に話しかけてくれた飴沢くんのことが、わたしはずっと気になっている。
二年生になるとクラスは別。親友よしみんのおかげで、たまに廊下で会えたりするけれど、緊張してしまって、八割方ほとんど記憶がない。
「ヨシミちゃん! 僕と付き合ってください」
「あたしね、好きな人がいるの。鈴木くんにはあたしよりも素敵な子が現れると思うよっ、だからごめんなさい」
教室後方。堂々たる告白を受けて、あっさりと嫌味のない返事が聞こえてくる。鈴木くんが潔く諦めて去って行くのが見えた。
カバンを肩にかけると、わたしは自分の席から立ち上がった。
「ごめんココ! お待たせ。行こっか」
「うん」
サラッサラのロングヘアーを耳にかけながら、颯爽と前を行くよしみんは、先ほど告白を受けていたわたしの親友。
可愛くてスタイルのいいよしみんと友達になれたのは、同じソフトテニス部でペアも組んでいるから。自然と仲良くなって、今はクラスも同じだし一緒に過ごす時間が一番長い。
入学してから今まで、よしみんは先輩後輩、同級生と、すでに二桁に上る数の男の子から告白をされている。
だけど、よしみんは誰とも付き合わない。なぜなら、よしみんが好きなのは、あたしの幼なじみのヨシトだからだ。
肝心のヨシトからはまだ告白をされていないらしい。いつもよしみんのこと「かわいい」って言ってるんだけどな。
最初のコメントを投稿しよう!