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「ねぇ、ココ。体育館寄って行かない?」
「うん、いいよ」
わたしが頷くと、よしみんは鼻歌を歌いながら体育館を目指す。
もちろん、お目当てはバスケ部。
よしみんがヨシトのことを好きなおかげで、わたしまで飴沢くんのバスケ姿を見ることができるから、感謝しかない。
「あれ? ココ体育館に用事?」
バスケットボールの入ったカゴを押しているヨシトとばったり出くわして、隣にいるよしみんに視線を送った。
瞳がキラキラと嬉しそうに煌めいているから、分かりやすいなぁと苦笑い。
「ちょっとね、部活が始まる前の見学」
「なにそれ? 面白いね」
体育館の中から「早くボール持ってこーいっ」と呼ばれて、ヨシトは急いで行ってしまった。
「あー、あたしも話したかったのにぃ」
ガッカリと体育館の中に走っていくヨシトの後ろ姿を見つめながら、よしみんがため息を吐いた。
悩ましげな表情をしているだけで絵になってしまうから、周りを歩いている男の子たちはみんな振り返ってよしみんに視線を向ける。
ヨシトだって、そんなよしみんの魅力には気が付いていると思うんだけど。
「どうして好きな人には、想いが通じないんだろうね……」
じっと眉を顰めてこちらを見られても、ヨシトの気持ちは分からないから、答えようがない。
「絶対、ヨシトくんってココのこと好きだよね」
「あ! また出ました、それ。絶対にないから」
「……どうして言い切れるの? 今だってあたしのこと無視だよ? ココとばっかり話してさぁ」
若干拗ねてしまったよしみんが、少し面倒くさい。確信はないけれど、ヨシトはよしみんのことを気になってるはずなんだよね。
わたしと話している時は必ず話題に出るし、評価もいい。ただ、オーラが凄過ぎて話しかけられないって言っていた。「よく友達出来てるね」って、わたしが褒められる始末だ。
「さ、じゃあヨシトくんに会えたし、行こっか」
「え!」
ま、待ってよ! それじゃあよしみんしか満足してないじゃんっ。わたしだって飴沢くんに会いたいんだけど。
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