好きなひと

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「あ! ソウジお疲れ様っ。なにダルそうにしてんの?」 「昼メシの牛乳飲み過ぎて気持ちわりぃの……」 「うわ……そんななるまで身長ほしい? これからまだ伸びるでしょ」  青白い顔をしてお腹を抱える飴沢くんより少し背の高いよしみんが、背比べをしている。 「お前な、自分が背でかいからって自慢してんじゃねぇ」 「女はデカくてもねー、ココみたいにちっさい方が可愛いよね」  戸惑っていたわたしの肩を掴んで、飴沢くんの前に差し出されるから、驚いて「ひっ!」と言ったきり黙り込んでしまう。  身長百五十センチのあたしと、推定百六十センチの飴沢くんの距離はだいぶ近い。見下ろされて、頭のてっぺんまで血が上って茹で上がりそうだ。 「まぁ、小さい方が、な」  胸の辺りを摩りながらそう言って、飴沢くんは体育館へと入って行った。 「ちょ、ちょっと! いきなりびっくりするから!」 「えー、だっていっつもココあたしの後ろに隠れてなんも喋らないじゃん。あいつ、今ココのことちっちゃくて可愛いって思ったよ」 「は!? いや、そんなこと思うわけないよ。可愛いとか言ってないし」  前向きに捉え過ぎでしょ、よしみんは。  チラリと体育館へと視線を向けて、ヨシトと話している飴沢くんを見る。ヨシトは背が大きいから、飴沢くんが小さく見えてしまうけれど、わたしよりは断然大きい。  よしみんは小学校の頃から飴沢くんと仲がいい。男女関係なく接することができるのが、よしみんのモテる理由なのかもしれない。  もしかしたら、飴沢くんだって、その一人なのかもしれないし。  よしみんはヨシトに夢中だから、飴沢くんの想いは叶わないのかなって思うと、自分のことのようになんだか、切ない。  まぁ、もしそうだとしたら、わたしの飴沢くんへの想いだって、叶わぬ恋になってしまう。 「もう、いっそのこと告白しようかなぁ、あたし」 「え?!」  サーブ練習の順番待ちをしている傍ら、突然よしみんが呟くから、思わず声が出てしまって慌てて口を押さえた。 「だってー、なんかいつまでもウジウジしてるのやだもん。そうこうしているうちに他の子にヨシトくん取られたらそれこそ立ち直れなくなる。ヨシトくんの彼女は、あたしかココ以外考えられないからね」 「え? わたし?」 「ココだったらギリギリ許せる……」  テニスボールを握りしめる手が小刻みに震えているのを見て、苦笑いが出る。  絶対許してもらえなさそう。
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