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告白
部活を終えて空を見上げると、今にも雨が落ちてきそうな黒い雲が広がっていた。
「うわぁ、降るねこれ。ココ傘持ってきた?」
「持ってない……」
「あたし折りたたみ傘持ってるけど、ココと逆方向だしなぁ」
話しているうちに、ポツポツと雨粒が落っこちてきた。
「あれ? ココじゃん。もしかして傘ない?」
昇降口の外に出て困っていると、傘をさしたヨシトがバスケ部仲間と現れた。
「うん、雨降ると思ってなかったから」
「一緒に入ってく?」
「あ、いや、でも」
隣によしみんがいるのに、それは出来ない。
「ヨシトくん! ……あたしのこと、送ってくれない?」
「……え」
いきなり、よしみんがわたしの前に一歩出ると、ヨシトに向かって言った。
いつも堂々としていて余裕のあるよしみんの後ろ姿が、小鹿みたいに震えているように見えた。
「これ、あたしの折りたたみ傘、ココに貸すから、お願い」
カバンから取り出した淡いピンク色の折りたたみ傘をわたしの胸元に突き付けると、ヨシトの傘の中に入り込んでしまった。
よしみんの行動力に呆然としていると、ヨシトが耳を赤くして困った顔をしているから、わたしは笑って手を振る。
「ヨシト、よしみんのことよろしくね」
「え……あ、うん。分かった」
たぶん状況を理解出来ずに混乱したままだ。
ヨシトは隣に並ぶよしみんのことを、濡らさないように気をつけながら帰って行った。
凄いなぁ、よしみんの行動力。あたしには到底真似できない。これでヨシトもよしみんの気持ちに気がつくはず……と、言うか、もしかしたらこの勢いでよしみんは告白するのかもしれない。
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