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次の日、わたしはヨシトに呼ばれて普段あまり使われていない学校の外階段にいた。
「昨日さ」
「うん」
しばらく黙っていたヨシトがようやく口を開く。昨日よしみんと帰った後にどうなったのか、気になっていた。よしみんとはいつも通りに話したけど、昨日のことに全く触れてこないから、わたしから聞くのもなにか違う気がして、聞けずにいた。
「よしみちゃんに告白された」
戸惑うように目を泳がせるヨシトに不安になる。ヨシトの姿からは、嬉しいとか喜びとか、そう言った感情が見受けられなくて、ただただ、困惑しているみたいに見えた。
もしかして、ヨシトはよしみんのこと、好きじゃなかった? 他に好きな子がいたりした? 頭の中にいろんな疑問が浮かび上がった。
「なんで俺なんだろ? あんなに可愛くて誰にでも接しやすくてモテるのに。なんで俺なんだろうって、不思議に思ってさ、返事……すぐに返せなかった」
眉を下げて、悔しそうにするヨシトに、わたしは不安の渦巻く胸の中が晴れていくのを感じた。
やっぱり、ヨシトはよしみんのことが好きなんだ。だけど、相手は超モテる人気者で、きっと嬉しさよりも、疑問の方が上回ってしまったんだろう。
「ヨシトは、よしみんのことどう思ってる?」
「そりゃ、可愛いと思うよ。みんなに優しいし、ココとも仲良くしてくれてるし。毎日のように体育館覗きに来るのは、誰か目当ての人がいるからなのかなって思ってた。それが、まさか俺だったってのに、驚いちゃって」
「はぁ」と、ため息を吐いてヨシトはしゃがみ込んだ。
「あんなにあからさまな態度とってたのに、意外とヨシトって鈍いんだねーっ」
「わかんねーって、俺なんかと話す必要もないだろと思って、いっつもココにしか話しかけてなかったのに」
「うん、よしみんずっとヨシトはわたしが好きなんだって勘違いしてたんだよ」
「はぁ?! まじ?」
今の反応で、完全にわたしへの恋心がないことが分かる。まぁ、なんか、悲しくはないけど寂しい気はする。
「どうしたらいい? 俺」
頭が良くていつも優しくて、みんなに愛想がいいヨシト。背も高くて大人びているから意外とモテているのに、本人は自覚がない。
頭を抱えてしまったヨシトに、わたしは「仕方がないな」と呟きつつ、しゃがみ込んだ。
「ヨシトがよしみんのこと好きなら、両想いなんだから、自信持って!」
トンっと肩を叩くと、困ったように照れ笑いするヨシトがかわいく見えてしまって、ふわふわの猫っ毛を撫でた。
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