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わたあめ
「もぉー、ココどこに行ってたのー? 探したんだよ」
「あ、ごめん、ちょっと」
教室に戻ってくると、わたしの席で待っていたよしみんがぷくっと頬を膨らませて怒る。
「部活いこ」
「今日は、体育館行かないの?」
「行かない」
「あ、そっか」
眉間の皺がなかなか消えないよしみんの表情に、わたしは戸惑ってしまう。
もしかして、よしみん、ヨシトにフラれたと思ったりしてないかな? ヨシトは保留にしたけど、よしみんからの告白は嬉しかったようだし、そうだったらまずいかも。
ぐるぐると頭の中で思考を巡らせていると、前からヨシトが歩いてくるのが見えた。よしみんが立ち止まるから、わたしも足を止めた。
「よしみちゃん、ちょっといい?」
「え……」
よしみんの目の前まで来ると、ヨシトがそう言って、よしみんの横をすぐに通り過ぎていく。わたしと目を合わせると、決心したような瞳で頷くから、わたしはヨシトが告白の返事をする決意を固めたんだと、緊張が走った。
「……ココ」
不安そうに振り返ったよしみんは、今にも泣き出しそうだ。だけど、わたしは二人がうまくいくことを知っている。だから、心配はいらない。
「大丈夫、行っておいで」
震えるよしみんの手をきゅっと握りしめて、わたしは笑顔で背中を押した。
小さく頷いて、よしみんはヨシトの背中を追いかけて行った。廊下を曲がるまで見届けると、なんだかホッとしてしまって、深いため息が出た。
「綿瀬」
急に名前を呼ばれて、わたしは驚いて飛び跳ねるように後ろに振り返る。
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