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「大丈夫?」
「……飴沢……くん?」
すぐ後ろに、飴沢くんの姿があって、さらに驚く。昨日と同じく、困ったようにわたしに「大丈夫?」と聞いてくる。
そんな顔をしている飴沢くんの方が、大丈夫? と聞きたくなってしまう。
「……大丈夫、だよ?」
「無理してない? 昨日から」
「え……?」
一体、なんの話だろう? 飴沢くんがわたしを心配してくれる理由がわからなくて困ってしまう。
「ちょっと、来て」
「え、」
急に掴まれた腕。
飴沢くんの手はバスケットボールを片手で持てちゃうくらいに大きい。わたしのひょろっとした手首が力強く引かれて、戸惑いながらも、高まっていく心臓の音に押しつぶされそうになりながら、わたしは飴沢くんについて行く。
夢中で進んできて、たどり着いたのはバスケ部部室前。
「ちょっとそこで待ってて」
「え、あ、うん」
腕を離して、パタンっと部室の中に消えて行った飴沢くん。わたしは呆然として、閉まったドアを見つめるしかない。
何が起きたのか、突然のことで驚いてしまう。ようやく、飴沢くんとここに二人きりだという事態に気がついて、一気に顔に熱が集中する。頭の中が混乱し始めた。
このままここで待っていても大丈夫だろうか。逃げ出したくなっていると、ガチャッと、ドアが開く音がした。
飴沢くんが出て来て、手にはなにかを持っている。
「綿瀬、とりあえず元気出せ。これやるから」
「……え?」
差し出されたのは、袋に入った駄菓子屋さんで売っているわたあめ。
「好きなんだろ? ヨシトのこと。よしみに取られて悲しくなってんじゃねーかなって思って。だから、これ、やる」
わたしにわたあめを近づけて、早く取れと言わんばかりに見つめてくるから、慌てて受け取った。
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