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「一年の時隣の席だった時あっただろ? そん時に言ってたじゃん。綿瀬と飴沢でわたあめみたいだなって。そしたら、綿瀬、わたあめ大好きって言ってたから」
みるみる間に、飴沢くんの頬から耳までがじわじわと赤みが広がっていくのを見届けてしまう。
覚えていてくれたんだ。
隣の席だった事も、わたしと話した事も。
嬉しい。
思わず込み上げてくる涙をグッと堪えながら、わたしはわたあめを抱えて飴沢くんに笑顔を向けた。
「ありがとう。大好き」
「え?! ……あ、ああ、わたあめ、な……」
うん、わたあめも飴沢くんも大好き。
飴沢くんが勘違いしているのは、わたしがヨシトを好きってこと。親友のよしみんに好きな人を取られちゃったってこと。
どっちもほんと、大きな勘違い。だけど、そのおかげで、飴沢くんが優しくしてくれた。
やっぱり、わたしは飴沢くんが大好き。
「あいつらと一緒にいるの辛い時は、俺んとこ来たら良いよ」
「……うん、ありがとう」
飴沢くんを好きになって良かった。
勘違いしている優しい飴沢くんを騙すつもりはないけれど、もう少しだけ、わたしはヨシトが好きだってことにしておこう。
だって、そうしたらまた「大丈夫?」って気にしてもらえそうだから。ずるいかもしれないけれど、わたしには、まだまだ告白する勇気は出ないから。
「飴沢くんこそ、よしみんのこと、いいの?」
ドキドキと苦しい心臓を押し込んで聞いてみる。
「え? よしみ? なんで?」
首を傾げる飴沢くん。あれ? この反応は、よしみんに恋心はない?
「飴沢くん、よしみんのこと、好きじゃないの?」
「は?! んなわけねーし。あいつは友達! みんな周りがチヤホヤしすぎなだけ。俺大きい女興味ねーし」
「え、小さい方がいいの?」
「そりゃ小さい方がかわいい……」
そこまで言ってから、わたしに視線を落とした飴沢くんは横を向いて「なんでもないっ」とまた耳を赤くしている。
そんな反応をされると、困ってしまう。どう言葉を返したら良いのか分からなくなって俯いてしまうと、ガヤガヤと声が聞こえてきて、「あ、飴沢くん、ありがとう」と、逃げるように部室から離れた。
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