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記憶の階段7
だけど、キイロさんは、「息子くんと会ってみたいな。うた子さんの元気な姿が見たいです」と、すぐに返事を下さった。
何年ぶりだろう?
会った時の、あのアーティストのライブツアーの時のアルバムから、幾つ新しいアルバムが出ていたろう。
ライブの時も、彼女は具合が悪くなった時の為にと、ホールのドアの近くの席を取り、旦那さんに付き添ってもらっていた。
体調の方は大丈夫なのだろうか。
私は、キイロさんにプレゼントする為に、優しい気持ちでイラストを描いた。
以前、私の絵が好きだと言ってくれたからだ。
週末、私と息子はお昼少し前に新幹線に乗った。
待ち合わせの場所は、仙台空港だ。
キイロさんの好きな、飛行機をみんなで見ようと思った。
少し、早めに到着したので、空港内のレストランで息子と昼食をとり、居場所をラインで伝えておく。
「うた子さん!」
「キイロさん!走って大丈夫!?」
「ううん、ダメ。でも、嬉しくて」
「ありがとうございます、ねえ、ありがとう、キイロさん。私、この間、キイロさんから電話をくれたこと、すごく感謝してます、ありがとう」
席を立ち、息を切らすキイロさんを支えると、旦那さんがニコニコ笑顔でお礼を言ってくれた。
「彼女に会いに来てくれて、ありがとうございます。今日を楽しみに、頑張ってたんですよ」
「そう、なんですか」
外出も、あまり良くないほど、身体の具合が悪いのだろうか。
以前会った時よりもさらに華奢になったと感じる薄い肩に、思わず指先を埋めてしまう。
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