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沖縄
自分の出身地をひた隠しにして生きる私を、故郷は許してくれるだろうか。
子供を守りたかった。可哀そうだと思われたくなかった。だけど、この子がいたから、そして福島に住んでいたから、一つの運命と巡り合う。
保養、と言うものがあった。
原発が爆発したことで、放射能の値が高い土地に住んでいる子供たちに、怯えずに自然に触れ、健康を取り戻させようと言うボランティアを行う人たちがいた。
ちなみに私は、自分の住まう土地が放射能に汚染されていて、子供を遊ばせることなど出来ない!とは考えていなかったので、その存在に自分からアクセスしたわけではない。
無知だと言われようとも、生きる場所を嫌い怯え生活することを選ぶことは、私が原発のある町で大きくなって、幸福に生きた記憶を憎むことだから。
私は、故郷を愛したままで、その保養、と言うものに参加することになる。
ただ、幼い息子に、海を見せたかった。
本当は、自分が育ったあの町の海へ、一緒に行きたかったけれど、その光景が叶う日が来ないことはわかっていたから。
被災してから、私ははじめてボランティアに携わる人たちと接することになった。
年齢は様々だったけれど、こうして支えになろうとしてくれたであろう人たちが、きっと私が絶望していた間にも沢山いたのだろうと思えた。
ただ出会えなかっただけで、あなたの命は大切だと、生きていてくれて良かったと、この子は世界の宝物だと、そう肩を抱いてくれた人が幻なんかじゃなかったって、そう思えた。
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