2017年

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2017年

 幸せになってもいい?  そう聞けば、もういいんだよ、と言ってくれるんだ。  散々な記憶を、捨てられないままでも。  私は、被災者だけど。  ばい菌扱いされて、まるで国の癌であるかのように罵倒された故郷を、それでもずっと愛していてもいい?  誰かが頷いてくれなくても、くたくたになった心に栄養をくれたね。  この、沖縄の保養でのめぐり逢いから、私が求めていた答えをくれる女性との出会いまで数年、私は胸の痛みを無視して、日々息子に笑いかけ続けた。  きっと、私も知りたかった。  二度とない「おかえり」「ただいま」に、納得が行く時を待って、この先を生きるつもりだった人々が、諦め切れないまま死んで行く。  救いには、なれない言葉で、優しく過ごすことで、どれだけ見送ったろう。  彼女も、そうであったように。  私も、同じように、新しい命と、新しい生活で。  彼らに「ただいま!」の笑顔は、あげられないから。  自分ですら、未だに求めてやまない、あの場所を。  さよならは言えなくて。  違えられた約束に、歯向かう力なんて残ってなくて。  苦しい気持ちを口にせず、だけど私は。  別の国で、分かり合える彼女と出会えた。  共通するシーンに、抱いた命に、失った人々の記憶が刻まれたまま、生きて生きて生きて、ここで。  私たち、見つめあって、声を。  ー 貴女に会えたこと。  そのことが、私にとっての奇跡。  いくつもの支えの手。  助けようと尽力して下さる方々の行動。  全てに、心から感謝出来るようになっていた。  だけど、どうしても、いつも思ってしまう。  同じ出来事にあったら、あなたはどうした?  私、間違えてなかったよね?  誰に、こんな話が出来たでしょう。  2017年の7月、私はとあるドキュメンタリー番組の撮影に出演する為に、幼い息子と共にベラルーシへと向かった。  
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