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「なにそれ。もう遅いから三池さんも早く家に戻ったほうがいいよ。僕も家に帰ってお風呂入らないと、お母さんに怒られるからもう行くね」
「うん、分かった。早瀬くん、またねー」
最後まで明るい雰囲気で、三池さんは家の門を入っていった。
次の日は雨だったので、お母さんが塾まで車で送り迎えをしてくれた。車だといつもの坂道ではなく、大通りを通るので三池さんと会った三叉路は通らない。
その翌日、自転車で坂道を下っていると、いつもの三叉路に三池さんの姿があった。
「早瀬くん、お疲れ様。毎日一生懸命勉強しているの尊敬するよ」
「三池さん、昨日もここにいてくれたのかな。ごめんね、お母さんが車で送迎してくれたから、この道通らなくって」
「昨日? ああ、気にしなくていいわよ。今、会えてるし」
三池さんは昨日のことなど気にもしていないのか、今会えているからと笑ってくれている。優しい女の子なんだな。そんなことを思っていると、いきなり背筋にゾワッとした感覚を覚えた。
誰かに見られている? そんな気がして周囲を見渡すが特に変わったものは見当たらない。
「どうしたの、早瀬くん?」
「いや、なんか誰かに見られているような気がして。でも、何もないみたい」
「もう、変なこと言わないで。私まで怖くなっちゃうから」
「ごめんね、じゃあまたね」
そう言って、僕は自転車を漕ぎ始めた。
またね、と言った自分に驚きながら。
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