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「きゃあ〜、楽しみぃ!」
そう叫ぶ美穂とさっきから時計を何度も確認する昂輝。
そして私は―――
「あー。ねむ」
フワァとあくびをしてソファーにゴロンと寝転ぶ。
――ちなみにだけど今日は夏休み初日。
父親は仕事に行ってしまった。
せっかく子供がいないんだからお出かけしてこればいいのにって思ったけどお出かけしたのは母親だけ。
でも母親は子供を置いて、九時前には車で最寄り駅まで行ったし。
―――私の父親と母親ってどっちも行き過ぎなんだよね。
「姉ちゃん!九時半!九時半になった!」
「早く行こっ!」
テンション高すぎ………
「まだ二十五分だよ。うぐっ!?」
「どーでもいいから行くよ!」
「お姉ちゃん、早く!」
昂輝と美穂が突進して来たかと思えば急に引っ張られ、ソファーから降ろされた。
こういうときだけ仲いいんだよな〜この人たち。
いっつも喧嘩しかしてないくせに!
「ハイハイ、分かった分かった。自転車準備しよ。あと手紙ね。忘れちゃダメだよ」
「持ったよ、手紙」
「俺もー。あ、姉ちゃん。ワンピースに着替えなくていいの?」
そう。私はラフな服装。でも理由はあるからっ!
「うん。だって自転車乗ってる時に汚れたら嫌じゃん」
「「たしかにー!」」
小さめのリュックに手紙と財布を入れ、手にはワンピースなどの服を入れた紙袋を持つ。そして紙袋を自転車のかごに入れたら―――。
「よし、行くよ!二人とも確認!手紙は持った?」
私がそう言ってリュックから封筒を取り出すと
「「持ったよー」」
といって二人が封筒をカバンから出すと、すぐに戻した。
「じゃ、行こっか。遠いけどね」
新那の家までは自転車を漕いで行かなければいけない。
―――遠いよぉー。遠いんだよぉ、新那の家って!
元々、道のりも遠いのに庭が広すぎて、これまた玄関までが遠いっ………!
途中、今度は白猫をひきそうになったけどなんとか避けた!
―――私は猫に恨まれているのか………?
いや自転車が恨まれていたり……?
私が自転車に乗っている時、猫が前をよく横切る理由は分からなかったけど無事ついた!
………新那の家の門に。
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