死ぬまで消えない

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「さようなら」 きっと聞くのが最後になるその声に、俺は、振り向きも追いかけもしなかった。 月光がおりる屋上で、重たい扉の閉まる音を聞きながら。ずっと握りしめていた右手のiPhoneを持ち上げる。そして表示されたままだったエアドロップの画面で、『受け入れる』を、そっと押した。 だからお前なんか大嫌いなんだ。 悲しくも、淋しくも、痛くもなんともない呪いだと、そう言ったじゃないか、大嘘つきめ。 絶対に開くものかと誓ったこころの扉が、いま、彼女の大きさ分ひらいていた。 そこから月光が細くさしこんで、俺の中の見たくないものまで照らすので、動けも泣けもせずに、俺はただ立ち尽くすしかなかった。
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