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「エアドロ使って痴漢する変態と同じくらい、お前は最低だよ。何でこんなことするんだ」
「ごめんなさい。もう二度とやらないから――私だって自分の生死の与奪くらい握れるんだぞって、そう思いたくてあの写真撮ったの」
「……お前の命ははじめから、お前だけが握ってるものだろ」
「違うんだなあ。病気とか、お医者様とか、お金とか、絶望感とか、そういうのに、今はほとんど握られてるかもしれない」
つまんないの。ため息交じりにそう呟いた声は酷く小さかったのに、秋の空気があまりに澄み渡るものだから、歩み寄ろうとしない俺にも、ちゃんと届いた。
いつもお前は勝手だった。勝手に近づいて心に入り込んで、お前に病気が見つかったら勝手に離れて、心を閉じたころにまた勝手に現れて。
どんなことを言われても、もう心を開くまいと睨みつける俺の感情を何もかも分かっているみたいに、じっと、月が見ている。
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