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「……は?」
「ふふ、怖い顔。呪うんだから静かに聞いてよ」
ひゅうと風が吹く。お前の声が風に乗って吹き付けてくる。
「これは、死ぬまでとけない呪い」
「私が今夜ここから消えて、ずっとずっと時間が経って、私の声や、顔を思い出せなくなっても」
「それでも君は私を忘れない」
「幸せな人生を君は歩む。夢を掴んで、気のいい友人に囲まれて、そして恋をする。その恋も必ず実る」
「大切なひとと結ばれて、君はいよいよ世界で一番幸せになる。でも」
「夢の途中にいるときも、友人と笑いあうときも、この上ない幸せの中にいるときも」
「それでも、君はふとしたときに私の名前を思い出す」
「君の深層心理とか、記憶とか、そういうものの一番深い場所に染みついた影みたいに、私はずっと、ずっと、死なずに存在する。君の命が終わるまで」
「でも君は、悲しくも、淋しくも、痛くもなんともないんだよ」
「あは。――こんな些細な呪い、かかってくれても、いいでしょう」
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