死ぬまで消えない

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グランドフィナーレを迎えた役者のように、深く静かに頭を下げるのを、呆然と見つめていた。 月に照らされた背中や首筋が以前にもまして細く小さくなったことにも、薄いTシャツの上からでもわかる浮き出た肩甲骨や背骨にも、ひどく狼狽えながら。 ――むかし、自由すぎるお前を縛るものは、何もなかった。その自由さを好ましく思っていたことにも、僅かに憧れを抱いていたことにも、本当は気づいていた。 あの日無敵のように思えた非常識と理不尽の塊のようなお前でさえ、いまも何者かに一方的に、命や選択肢を奪われ続けているというのか?そしてもうすぐ奪われきって、この世界から、居なくなろうとしているのか? それがひどく恐ろしいことに思えた。病気だと知った時にも、彼女は負けたりしないのだろうと勝手に思っていたのだ。でも、本当は、それが彼女にとっても恐ろしいことだったのだと、どうしてそんな当然のことを考えもしなかったのだろう。 抗いようもなく俺の目に走った懐かしい感情を察したようで、もう何も言わずに、彼女は俺の横を通り過ぎて出口へ向かっていく。
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