優等生の愛情

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私は一人だった。 ちょうど中学受験に向けて勉強を始めた頃だった。 新しいことを知るたびに世界が広がる感覚。 それをまだ楽しいと感じていた。 日の光に少し浴びたくなって、外に出ると子どもが走り回っている。 元気でのどかで煩わしい。 教室に帰ろうとすると、クラスメイト(赤の他人)の顔が見えた。 みんな笑ってた。 女子4、5人で走り回っている。 私は知り合いに何をしてるのか尋ねると鬼ごっこと答えた。 そうなのかと思い、帰ろうとした瞬間 「タッチ!」 と言われ、次はあなたがオニだよ!と言われた。 なぜだか足は動き出し、久しぶりに走り回った。 私は忘れていたのだろう。 子どもの心(欲望)を隠して押し潰して、空虚な世界を作り上げていたのだろう。 「あはは!」 笑ったのなんて久しぶりだ。 その後、少し顔が痛かったので、表情筋をもっと使わなければいけないなとも思った。
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