面倒くさい

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面倒くさい

 「もう~、面倒くさいな……」  昼休みの屋上で、パンをかじりながら 彼が僕に言った。  「面倒くさいって、何が?」  僕は、彼にそう尋ねた。  「彼女とあの娘のことだよ……  はぁ~、二人とも俺の言うこと  全然、聞いてくれないんだ」  「そうなのか……でも、彼女が いることをはっきりとあの娘に伝えた ほうがいいんじゃないの? これ以上、 こじれたら大事になるよ……」  「そうなんだけどさ、彼女、 俺がいくら言っても信じられないとか 言ってさ。あの娘は、あの娘でもう 真っすぐに突進してくる勢いだし……  俺、心が折れそうだよ」  シュンとする彼を見た僕は、 思わず……    いや~ん。可愛いんですけど。  いつもツンとしている彼からは 想像できないほどに愛おしいんですけど。  僕は思わず、彼を抱きしめようと手を 伸ばしたんだ……。  でも、  「何? なんだよ……」  「え? いや、なんでもないよ」  伸ばした手を引っ込めた僕は、 あえなく自爆……。  気を取り直して、再度、 違う角度からアプローチを試みた。  「おまえ、さっきから何やってるの?」  彼が僕を問い詰める~。    「い・いや、別に……落ち込んでる みたいだから、励まそうかな……と 思って……」    「だから? なんだよ。はっきり言えよ。 もう~、面倒くさいヤツだな……」  「え? 今なんて?」  「なに、一人でわちゃわちゃしてるの?  おまえ、本当に面倒くさいぞ~」  「俺、面倒くさいの?」    僕に突き刺さった、『面倒くさいヤツ』の言葉。  思わず、目頭に熱いものが込み上げてくる。  僕の表情を見た彼は、ビックリしたみたいで、 慌てて、僕の両肩をガシッと掴むと、  「冗談だよ。冗談。少しイライラしてさ、 ごめんな」  優しく微笑んだ君が僕の顔を覗き込んだ。  ドクン、ドクン、ドドドドドドドドド。  心臓の音が速くなったのがわかった。  「べ・別に、大丈夫だよそのくらいのイライラ。  いつものことでしょ?」  僕が彼にそう言うと、彼は、満面の笑みで 僕に抱きつき、  「あ~、やっぱり、おまえは面倒くさくなくて いいよな~。俺、おまえとつき合えば いいのかな~?」    と僕の心臓が飛び出るほどの発言をした。  顔が真っ赤になった僕は、意を決して、  「え~、そうかな? じゃあ、僕とつき合う?」  と言ったが……  「え? おまえ、何言ってんの?  何、真に受けてるんだよ。冗談だよ。  ほら、昼休み終わるぞ」  言いうと、彼は教室に戻って行った。  屋上に、残された僕……  「面倒くさいのは、君じゃないかぁ~」  と大声で叫んだ。  
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