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※シーン08:それからそれから
※シーン08:それからそれから
「あの、それではそろそろ帰りま、……はぅっ!?」
そうだわ、駅で着替えんと!
あたしじゃなくて、『瀬本朱亜(男装)』しないと!!!!
「ん?同じ電車でしょ、……あ、……」
「…で、ではあたし!そろそろ帰宅しまっす!!歩きますので!!」
危なかった、なにナチュラルにそのままで一緒に帰ろうとした?!!
駅寄ってかないとまずいじゃん!!
一人にならないと……っ!!
「そう、なんだ?……歩き……」
「ここでお別れしますね!お借りしたお金は、必ず返します!!」
というても、その時は『瀬本朱亜(いつものあたし)』のはずだから……うん、突然預けられたとか、なんとか理由つけて絶対返そうっと。
「うん」
「また君に……すもあさんに、会いたい」
続けられた言葉に、あたしは目を見張る。
「……え?」
「あと千円、追加で貸すよ。歩けなくなったら電車乗って」
木崎さん…ほんまにええお方や……!!
「あ、はい!ありがとうございました!それでは失礼します!!」
頭を丁寧に下げてから、互いに手を振って別れた。
そしてお互いに視界から完全に消えてから。
「意外と面白い人なのかな?先輩って……」
今日一日で、すごく木崎さん……っと、先輩の知らなかった一面が見れた。
それはかなりの大発見だったから。
純粋に。あたしは安牌としか思ってなかった自分を反省した。
そして、あたしと別れた後の先輩が、
「本当に、君がどニブくてよかった…久しぶりに練習しないと、女声……」
なんてこっそり独り言ちてたなんて全く知らなかったし、思いも及ばなかった。
明日からはまたいつも通りのクソ野郎達の世界に居なきゃなんだけど。なんとなく、ホントにちょっとだけ。
先輩の事が気になりだした……かもしれない、そんなとある日曜日のおしまい。
(終わり)
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