開闢相伝

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「…というわけで、儒教哲学において周 敦頤(しゅう とんい)の影響力は大きく…」 「……つき、樹」 ん?なんだ? 「…ん~…あ?」 「樹、起きろって!」 ガバッ やべ!熟睡してた うわぁ、高梨すっげぇこっち見てる 「きり~つ、礼。着席」 「うわぁ、俺絶対目付けられたぁ」 「お前古典の授業、寝る率高くね?」 後ろの席から(あおい)がペンで背中をつついてくる 「だって高梨の奴、無駄にいい声してんだもん。あの声でわけわかんない話されたら寝るだろ普通」 「お前なぁ、儒教哲学だぞ?ちゃんと聞いとけよ」 神道系の中高一貫校 実際は神道とは無関係の奴等がほとんどだ が、俺と碧は、そのほとんどから外れている 別に決められた人生のレールから外れてまでやりたい事も、なりたいものもないし、不満があるわけではない が、やる気があるわけでもない 「碧~、今日は外で食おうぜ~」 購買部でパンを買い外へと向かう 適当に腰を下ろして食べ始める 「碧、また背伸びた?」 「ああ、ちゃんと測ってはないけど多分な」 去年まで俺の方が高かったのに… 俺だってまだ伸びてるし! 牛乳をぐびぐび飲む 背はわかんないけど、とりあえず筋トレ時間増やすか 俺が闘志を燃やしてると、 「お前さあ、自分の立場わかってる?お前が俺より大きいと何かと不都合なんだけど」 碧がいかにも不服そうな顔で言ってくる 「大丈夫大丈夫。『菊』はまだ蕾のままだ…」 「おい!」 碧が俺の話を遮って睨んでくる 「睨むなよ。その辺に咲いてる花の話だろ」 「…お前が花に興味があるなんて知らなかったよ」 眼鏡の奥の瞳は凍りそうなほど冷たい これがクールでいいんだとか言ってる女子達がいるが、さっぱりわからない 俺が5歳になった頃、臍の左側にほくろのようなものができた たいして気にしてなかったが、半年程経つと少しずつ大きくなってきて、一緒に風呂に入ってた父親が気付いた 今でもあの時の父親の顔を覚えている 驚いただけではないその顔に、俺はとんでもない病気にかかってしまったんだと思った けれども一向に病院に連れて行かれる様子はなく、病気じゃなかったんだと安心した そのほくろのような物は、その後も少しずつ大きくなっていったが、痛くも痒くもないので、たいして気にもしていなかった 俺が10歳になると、お客さんが来るからと、神職に就いてる両親は毎日のように着ている、白衣に袴姿に着替えさせられた その時会ったおばさんが、どうやら現在の『隠逸花(いんいつか)』通称『菊』の保持者だったらしい その時話した内容は当時の俺にはさっぱりだったので覚えてないが、10歳にもなって、知らないおばさんに服を脱いで腹を見せたという記憶だけは残っている 中学に入る頃、もはやほくろとは言えない、明らかに花の蕾のような紋様が浮かんできた それから3年特に変化はない ……自分の体ながらはっきり言ってキモい むか~し昔、遥か昔 陰陽師やらが全盛期だった頃、各地のそういう土地を守っている人達が連携を取り、日本全体の結界を整理したらしい どうやったのかは知らないけど、どこにどんな結界があるのかを把握して、必要な場所に結界を作ったり、それを維持していける教育をしたり? そんで、その知識というか、情報みたいのを凝縮したものを造り出した それを受け継ぐ者の印が、体の一部に菊の花の紋様として出てくるらしく、隠逸花と呼ぶらしい 受け継ぐ度に、それまでの情報に、その時代の情報が追加されアップデートされてく そうやってこの世界の平和は維持されているらしい ………碧から何回聞いても意味不明だ…
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