開闢相伝

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柊佳が高校に入ってすぐ母が亡くなった 学校関係のことは、忙しい父の代わりに俺が出向いた なるべく柊佳の傍に居るようにはしたが、柊佳にとっての母の存在は大きく、度々学校も休んでいた 高校2年生になりしばらくすると、徐々に笑顔が見られるようになり、学校もあまり休まなくなった 安心していた 柊佳が元気を取り戻し、家の中の事は母が入院後度々来てくれる叔母が手伝ってくれ、俺はどんどん進められている開闢継承の準備等に時間を割くようになった 柊佳が高校3年、樹君が高校1年になった 夏休み、いつものように碧君の代わりに刀禰家へ行く 出掛けに見た柊佳の表情が気になった その日の夜、柊佳から電話がきた 柊佳が電話してくる事など滅多にない 何事かと電話に出ると、仕事中にごめんと謝った後、泣きながら話し出した 母の代わりに家の事をしてくれる叔母に、ずっと苛められているとのことだった 俺に対してはその片鱗すら見せない そのせいか、俺が近くに居る時は態度が軟化するそうだ 暴力を振るわれるわけではない 話し掛けても無視したり、頼み事をするとあからさまに嫌な顔をされたり、機嫌が悪い時は物に当たったり、そんな事が続いていたらしい ところが昨年辺りから、言葉による攻撃が始まった 大抵は、大禮(おおのき)本家に生まれながら、その能力を受け継いでいなかったこと、そして、神職者ではない者を母に持ったせいだというような事を繰り返し言われていたらしい 自分の事はいい、でも、母のせいだと言われる事が我慢出来ず、一度言い返した それが相当気に食わなかったらしく、最近は怒鳴り散らす事が多くなり、もう叔母には家に来て欲しくないとの事だった 実際すでに、叔母が来なくなって家事で困るような事はないだろう 帰ったらすぐに父に相談すると伝えると、とても安心していた 幸い今回は3日で戻れる 帰るまで毎日柊佳に電話した 碧君に引き継ぎ家に戻り、早々に父に相談した 父は相当驚いていたが、叔母の訪問を断ってくれるとのことだった 俺でも全く気付かなかったのだから、父が気付かないのも当然だろう 来年には柊佳も大学生になり家を出る この環境から離れられれば、普通の大学生として何の気兼ねもなく学校生活を楽しめるだろう
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